戸建てとマンションどっちがお得?ランニングコストを比較

戸建てとマンションどっちがお得?ランニングコストを比較

マイホームはランニングコストも重視しよう

マイホームを購入する際、戸建てがいいかマンションがいいか迷う方は多いのではないでしょうか。一概にどちらがいいと簡単に決められるものではなく、条件によって最適な答えが変わってきます。複数の条件を挙げ、それぞれ戸建てとマンションどちらが優れているかを比較して決める必要があります。

比較ポイントはいくつかありますが、コストを比較しない方はいないでしょう。コストを比較する際、住宅の価格など購入時にかかる初期費用のみを比べる方が多いのですが、ランニングコストの存在を忘れてはいけません。

初期費用とは、戸建て住宅を建設するための建設費や土地代もしくはマンションの購入費。ランニングコストとは、購入後マイホームに住み続けることでかかる費用のことです。

「生涯コスト」との関係

初期費用とランニングコストとを合わせ、マイホームを建築・購入してから住み続けている間にかかるコスト、さらにはマイホームを処分する費用までを含めたものを生涯コスト(ライフサイクルコスト)と呼びます。

生涯コスト(ライフサイクルコスト)は戸建て・マンションでそれぞれ異なるため、比較検討する際の重要なポイントです。また、初期費用は生涯コスト(ライフサイクルコスト)の25%程度と言われており、ランニングコストが占める割合が圧倒的に高くなります。長く住み続けられるマイホームを購入するには、戸建て・マンションそれぞれにかかるランニングコストを理解した上で、どちらにするか決めることが大切です。

戸建てとマンション共にかかるランニングコスト

戸建てとマンションでは必要になるランニングコストが異なりますが、「光熱費」「保険料」「税金」「メンテナンス費用」など、共通してかかるランニングコストもあります。

光熱費

戸建てとマンション、どちらが「光熱費」が高くつくのか比較してみると、戸建ての光熱費の方が高い傾向にあります。

マンションは上下左右が他の部屋と隣接しており外気に触れる部分が少ないため、外気温の影響を受けにくく室内の温度が変化しにくい傾向にあり、結果としてマンションの方が比較的光熱費が安くなる傾向にあるのです。

保険料

「保険料」とは火災保険や地震保険にかかる費用ですが、これも戸建ての方が高くなる傾向にあります。

マンションの方が火災や自然災害に対する備えがしっかりしているため、戸建てより火災や災害の被害を受けにくいと推測されます。その結果、マンションの方が戸建てより保険料が安くなるのです。
ちなみに、マンションの共有部分については管理組合が一括で保険に加入しているのが一般的で、専有部分について個人で加入するようになります。

税金

「税金」は固定資産税が主で、地域によっては都市計画税が課税されます。固定資産税については、戸建てよりマンションの方が高くなる傾向にあります。

固定資産税は土地や建物といった不動産に対する評価で上下するもの。そのため、火災や自然災害への備えがしっかりしていて被害のリスクが低いマンションは不動産としての評価が高くなり、固定資産税が高くなります。

メンテナンス費用

「メンテナンス費用」は、住み続ける限り必ずかかる家の修繕費用。

戸建ての場合、メンテナンスが必要になった時にその都度支払うことになるので、タイミングを自分で調整することができ、緊急性の無い場合は金銭的な負担の少ない時期を選んでメンテナンスを行うことができます。

マンションの場合、修繕積立金という形でメンテナンス費用を毎月支払っていきますが、これはマンション全体のメンテナンスに使われます。専有部分のメンテナンスは含まれないため、各自でメンテナンス費用を支払う必要があります。

メンテナンス費用は、長く住むほどマンションの負担が大きくなっていきます。例えば、修繕積立金を毎月15,000円、30年間払い続けたとします。1年間で支払う修繕積立金は180,000円、30年間の総額は540万円にものぼります。また、マンションは管理費もかかります。管理費が月10,000円だったとして、1年間で120,000円、30年間で360万円。修繕積立金と合わせると900万円です。マンションの場合、この金額はマイホーム(専有部分)のメンテナンスには使えないため、さらにメンテナンス費用を貯める必要があるのです。戸建てよりマンションの方がメンテナンス費の負担が大きい、ということが分かります。

戸建てのみのランニングコスト

戸建てのみにかかるランニングコストについて見ていきましょう。

マンションの場合、エントランスのセキュリティや防災設備などが元々備わっていますが、戸建ての場合は自分自身で必要な設備を取り入れ、維持していかなくてはなりません。マンションのように管理会社が建物の状態を見ていてくれるわけではないので、必要に応じてメンテナンスをしていく必要もあります。マンション並みの防犯性、防災性の高さを求めると、ランニングコストも高くなります。

「メンテナンス費用」は、戸建て、マンションどちらにもかかってくるランニングコスト。違いは、戸建ての場合は屋根や外壁の塗装、床下修繕など建物全体のメンテナンスの管理が必要になるという点でしょう。マンションであれば管理組合や管理会社が行ってくれるメンテナンスも、戸建ては個人で行わなければなりません。

一方で、ライフサイクルに合わせて時期を調整することができるため、融通が利くという利点もあります。今年は大きなイベントが続いて資金が厳しい、という場合、メンテナンスを先送りすることもできるのです。

メンテナンスのタイミングを素人が判断するのは難しいので、住宅産業協議会が発表している「住まいと設備がこうなる前にメンテナンスを」という資料を参考にするといいでしょう。このガイドブックには、具体的な例を挙げながら対応方法やメンテナンススケジュールがまとめられており、メンテナンスをしないとどうなるのかという説明もされているので、メンテナンスの必要性を理解するのにも役立ちます。ホームページから無料でダウンロードできる資料ですので、快適な住まいを維持するために活用することをおすすめします。

※参照:住宅産業協議会「住まいと設備がこうなる前にメンテナンスを」
https://www.hia-net.gr.jp/sumai_mente.html

アットホーム株式会社が実施した、「―新築―戸建て購入後30年以上住んでいる人に聞く「一戸建て修繕の実態」調査」によると、修繕した回数が一番多いのが「外壁」、2位が「給湯器」、3位が「トイレ・お風呂」と続きます。

長く住み続けることを考えれば、屋根や外壁の塗装をし直して外観を整えるほか、日常的に使う場所の修繕は避けて通れないもの。内装の修繕も必要になりますし、給水管・庭・駐車場もメンテナンスが必要です。

※参照:アットホーム「―新築―戸建て購入後30年以上住んでいる人に聞く「一戸建て修繕の実態」調査」
https://athome-inc.jp/wp-content/themes/news/pdf/kodate-shuuzen-201607/kodate-shuuzen-201607.pdf

そのほかのメンテナンス費として、建物のシロアリ対策、防水工事も必須でしょう。

建物の基礎が傷んでしまえば、安全に住み続けることが難しくなってしまいます。長く安全に住み続けるには建物の状態を良い形で維持しなければなりませんが、建物の防水性能が落ちると建材が傷んだり歪んだりして、建物の寿命を縮めてしまいます。定期的に防水工事を行うことで、建物が傷みにくく安全に暮らせるようになります。

シロアリ対策も同様に、建物の状態を良い形で保つために必要な処理です。シロアリ対策や防水工事は場所や状態によって必要な工法が変わってくるので、素人が判断するよりも専門業者に相談しましょう。できれば複数の業者に相談し見積をとることで、コストを抑えることができるかもしれません。

新築で戸建て住宅を購入した場合、一般的にメンテナンスが必要になるのは築10年を過ぎた頃から。購入してすぐ必要になるケースは非常に少ないので、数年掛けてメンテナンス費用を貯めておくといいでしょう。外壁塗装は1回あたりの平均費用が135万円、屋根塗装で137万円、シロアリ対策で40万円、床下修繕で48万円となっています。前述した「―新築―戸建て購入後30年以上住んでいる人に聞く「一戸建て修繕の実態」調査」によると、30年間でかかる費用は約360万円となります。

ランニングコストを下げるための設計

メンテナンス費用は必要不可欠なコストですが、設計の段階から意識することでランニングコストを削減する方法もあります。

まず「省令準耐火構造」の基準を満たした住宅であれば、火災保険料を安くすることができます。「省令準耐火構造」の基準を満たす住宅の特徴は、「外部からの延焼防止」「各室防火」「他室への延焼遅延」などで、一般の木造住宅より耐火性能が高く火災に強いことを現しています。そのため、「省令準耐火構造」の基準を満たしていれば火災保険における鉄骨造と同等の区分とみなされ、火災のリスクが低いという理由から火災保険が半分程度に軽減されます。同様に、地震保険でも通常の木造住宅に比べて安全性が高いとみなされ、保険料が軽減されます。

ランニングコストの1つである「光熱費」も、住宅の断熱性、気密性を高めることで削減することができます。断熱性が高い家は外気温からの影響を受けにくくなるため、冷暖房費を抑えることができます。気密性が高ければ外気温の侵入を防ぐことができるため、さらに室温を快適に保つことができるでしょう。気密性が高い家は湿気で建材が傷んでしまう、といった事態も防げるため、メンテナンス費用を抑えることにも繋がっていきます。

省エネのためにどんな設計をして、どんな設備を導入するのか。どんなメンテナンス計画を立てていくか。生涯コスト(ライフサイクルコスト)を抑えるためには、初期の計画が肝心です。住宅会社に相談しながら、中長期的なプランを考えましょう。

マンションのみのランニングコスト

マンションのみのランニングコストと言えば、「修繕積立金」「管理費(共益費)」、必要であれば「駐車場代」です。特に「修繕積立金」は住み続ける限り必要になる上、金額が変わってくる可能性もあるので、事前によく理解しておきましょう。

修繕積立金

「修繕積立金」とは、共有部分のメンテナンスを行う費用をまかなうために使われます。主にマンションの外壁の塗り替え・屋上の整備・配管設備の管理・防災用設備の修繕といった内容が含まれます。

一般的に「修繕積立金」を管理しているのは、そのマンションの管理組合です。管理組合は法律で定められた組織で、マンションの住人は全員が組合員となり、マンションを快適に保つため、マンションの資産価値を守るための活動を行うこととされています。

管理組合の活動の一環として「修繕積立金」や「管理費」の徴収と管理があり、「修繕積立金」の金額を決めるために長期修繕計画を立てる必要があります。長期修繕計画を元にした金額であれば説得力があり、納得して「修繕積立金」を支払ってもらうことができるからです。

「修繕積立金」の金額を決める際、必要となるメンテナンス費用を住人全員で支払うことを前提に計算されます。例えば、エレベーターのメンテナンスに必要な金額を住人50人で支払う場合、メンテナンス費用÷50=「修繕積立金」という計算になります。

2020年度「首都圏中古マンションの管理費・修繕費積立金」によると、マンションの「修繕積立金」の平均額は月11,071円となっています。ところが、マンションの住人が減ってしまうと、減った人数分の「修繕積立金」を残った住人でカバーしなくてはなりません。そのため、「修繕積立金」の金額が増えることもあり得ます。

また、長期修繕計画を元に算出された金額なので、実際にメンテナンスをしてみたら計画より費用がかかる、ということもあるでしょう。その場合、不足した分の金額が後から徴収されることもあります。

多くのマンションは、修繕積立費用が数年ごとに増加する階段増加型という方式をとっています。初期段階では「修繕積立金」が少ないため、マンションを購入する人にとって負担が少なくてすみます。ところが、この方式を取り入れているマンションは長く住むほど「修繕積立金」が増加することになるため、ランニングコストも増加することに。

老朽化したマンションは大きな修繕工事が必要になることも増え、不足した修繕金を徴収される機会が増える可能性もあります。

管理費(共益費)

「管理費」は、マンションの共有部分を快適に保つための経費として使われます。共有部分とは、主にゴミ置き場や廊下、エントランスやロビー、エレベーターなどです。日常的な清掃業務・定期的なメンテナンス・電気代などが費用に含まれています。さまざまな管理を外部の会社に依頼していればいるほど、「管理費」も多く支払わなければなりません。

前述した「首都圏中古マンションの管理費・修繕費積立金」によると、マンションの「管理費」平均額は月12,480円で、共有部分の設備が充実していればいるほど管理費も高くなる傾向にあります。

管理費は共益費と呼ばれることもありますが、明確な違いはほぼ無く、管理費か共益費のどちらか一方が徴収されます。修繕積立金と同様、管理費も長く住み続ける中で変動する可能性があるため、見通しをもつのが難しいと言えます。

マンションの共有部分とは別に、専有部分のメンテナンスも必要になるでしょう。専有部分のメンテナンスについては住人が行うものですので、修繕積立金や管理費とは別に費用がかかります。具体的には、お風呂や台所といった水回りの設備のほか、室内の各設備も老朽化していくためメンテナンス費用がかかることになります。

2020年度「首都圏中古マンションの管理費・修繕費積立金」の数値を元に計算すると、修繕積立金・管理費を20年間支払った総額は約565万2,240円。これとは別に専有部分のメンテナンス費用が必要になるので、自分自身で計画的に準備していく必要があります。

駐車場代

マンションに住む場合のその他のランニングコストとして「駐車場代」があります。これは駐車場を契約した場合のみかかる費用なのでランニングコストに含まれない場合もありますが、車が必須な地域であれば、住み続ける限り必要なコストになります。

※参照:公益財団法人 東日本不動産流通機構 「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金」(2020年度)
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_202105_1.pdf

ランニングコストを抑えやすいのはどちら?

戸建てとマンションで比べると、初期費用が比較的嵩むのは戸建てですが、ランニングコストを抑えやすいのも戸建てです。

マンションは初期費用を抑えやすいものの、修繕積立金や管理費といった毎月徴収されるコストがあるため、ランニングコストがかかります。修繕積立金・管理費ともに金額が下がる確率は極めて低いため、長く住むほどランニングコストがかかるようになります。

戸建ての場合、設計の段階から建築材を長寿命で高性能なものにする、断熱性や気密性を高めるといった工夫をすることで、メンテナンスにかかるランニングコストを削減することが可能。断熱性や気密性の高い家は光熱費を抑えることもできるので、さらにランニングコストを抑えることができます。

長く住み続けることを前提として考えるのであれば、ランニングコストの低い戸建てを選ぶことで、最終的に生涯コスト(ライフサイクルコスト)を低く抑えることが可能になるのです。

戸建てとマンションの初期費用

生涯コスト(ライフサイクルコスト)に含まれる初期費用についても簡単に解説しましょう。初期費用に含まれるのは次のような費用です。

  • 頭金
  • 税金
  • 登記費用
  • 保険料
  • 仲介手数料
  • 住宅ローン諸費用など

頭金は、住宅価格からローンの借り入れ分を差し引いた金額になり、自分で金額を決めることができます。ローンを少なくしたいからと頭金の金額を多くしすぎると、その後の急な出費に対応できなくなるので注意しましょう。

マイホームを購入する際にかかる税金は、印紙税・固定資産税・不動産取得税など。場所によっては都市計画税も課税されます。印紙税は契約書などにかかる税金、固定資産税と不動産取得税は不動産を取得した際にかかる税金です。

保険の加入は任意ではありますが、災害が多い日本では備えは万全にしておきたいもの。物件の引き渡し前など、早めに加入しておきましょう。

仲介手数料は、新築物件を購入するなど、間に業者が入らなければ必要ありません。仲介手数料が安い業者を探す、売主から直接購入するなど、仲介手数料を節約する方法もあります。

マイホームをローンで購入する場合には、上記以外に以下のような諸費用が初期費用として必要になります。

  • 住宅ローン借入費用
  • 保証料
  • 登録免許税、司法書士費用など

住宅ローンの契約を結ぶ際は、金融機関へ事務手数料を支払う必要があります。また、火災保険などの保険に加入することが条件になっていることが多いので、保険加入に必要な費用も加わります。

マンションの方が初期費用が安い理由とは?

初期費用で比べると、戸建てよりマンションの方が比較的安い傾向にあります。費用の違いで大きいのが「土地代」です。

マンションにおける土地代とは、マンション全体の延べ床面積のうち専有部分の面積のみとなるため、戸建ての土地代より安くなります。

例えば、1世帯あたりの平均延床面積が100㎡で、100世帯が暮らしているマンションがあったとします。その場合、100㎡×100世帯=10,000㎡ですから、マンション全体の延床面積は10,000㎡となります。

このマンションの土地価格が1億円だった場合、1区分の所有者が負担する土地代は10,000㎡中の100㎡、つまり全体の1/100となるので、1億円×1/100=100万円という計算になります。

戸建てに比べて土地代がぐっと安く抑えられることで、初期費用全体を抑えられるというわけです。

マンションの場合、建物の中に専有部分だけでなく共有部分もありますが、共有部分に関しては管理のために管理費(共益費)が徴収されることになります。

家の性能によるランニングコストの違いを詳しく知りたいなら

ランニングコストには、保険料・税金・光熱費・メンテナンス費といったさまざまな費用が含まれます。

そんな中、家の断熱性や気密性を高めることは、快適な家づくりだけでなくランニングコストを削減するという点でも大きな意味をもちます。断熱性や気密性が高い家は光熱費を抑えられますし、建物の傷みを防ぐためメンテナンスの費用を抑えることにも繋がるからです。

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