家が壊れる震度は一般的にどれくらい?必要な対処とは?

【震度別に解説】家が壊れる震度って?

気象庁「震度階級関連解説表について」を参考に震度ごとに想定される家の被害をまとめました。
なお、文中の「耐震性の低い建物」は、昭和56年の耐震基準変更前の建物(旧耐震基準)、「耐震性の高い建物」は耐震基準変更後の建物(新耐震基準)を意味します。

震度5弱

  • 屋内…多くの人が物にすがりたくなります。電灯などの吊り下げ物は激しく揺れ、食器や本が棚から落ちることがあります。
  • 屋外…窓ガラスが割れることもあり、鉄筋等で補強されていないブロック塀が倒れることもあります。
  • 躯体への影響…耐震性の低い木造住宅だと、壁に軽い亀裂やひびが入るなど建物の躯体そのものへの影響がではじめます。

震度5弱から5強になると、軟弱な地盤に亀裂が生じることがあります。

震度5強

  • 屋内…食器や本棚の本だけでなくテレビが落ちたり、タンスなど大型家具が倒れたりすることもあり、何かにつかまらないと歩けない状態になります。
  • 屋外…据え付け不十分な自動販売機や墓石が倒れることがあり、車の運転が難しくなります。
  • 躯体への影響…耐震性の低い木造住宅では、壁などのひびや亀裂がさらに多くなります。一般的には木造より構造的に強い鉄筋コンクリート造の建物でも耐震性の低い建物は、壁や柱、梁などに亀裂やひび割れがまれに生じます。

震度6弱

  • 屋内…固定されていない大型家具が移動・転倒し、開かなくなるドアが多くなります。
    稼働中のエレベーターの多くが故障により停止します。
  • 屋外…かなりの数の建物で外壁のタイルや窓ガラスが破損、落下します。
  • 躯体への影響…耐震性の低い木造住宅では、壁に大きな亀裂が入り、建物が傾くことがあります。鉄筋コンクリート造でも、耐震性の低い建物は、壁や梁、柱にひび割れや亀裂が多く見られるようになります。

震度6弱から6強になると、地割れや山崩れ、土石流が発生することがあります。

震度6強

  • 屋内…固定されていない大型の家具を含め、ほとんどの家具が移動、転倒。立っていることができず、地面にはわないと移動ができなくなります。
  • 屋外…多くの建物で壁や窓ガラスが破損、落下し、補強されていないほとんどのブロック塀は倒壊します。
  • 躯体への影響…耐震性の低い木造住宅では、全体が倒壊する建物がではじめ、耐震性の高い木造住宅でも壁に亀裂やひび割れが見られるようになります。鉄筋コンクリート造でも耐震性の低い建物は、壁や柱、梁に、X状の亀裂やひびが入り、1階、中間階では柱が崩れるものもではじめます。

震度7

  • 屋内…ほとんどの家具が動き、飛ぶものもでてきます。
  • 屋外…ほとんどの建物の壁や窓ガラスが破損、落下し、補強されているブロック塀でも破損するものがでてきます。
  • 躯体への影響…耐震性の低い木造住宅では、建物の1階もしくは全体が倒壊するものが多くなり、耐震性の高い木造住宅でも傾くものが多くなります。耐震性の低い鉄筋コンクリート造は倒壊するものもではじめ、耐震性の高い鉄筋コンクリート造でも、1階、中間階が変形、傾くものがでます。

震度7になると、大きな地割れや地すべりが発生し、地形が変わることがあります。

その他、大きな地震の影響として以下のような事象が考えられます。

  • 地盤の液状化
  • ライフライン(電気・ガス・水道)の供給停止
  • 鉄道や高速道路の運行停止、通行止め
  • エレベーターの停止

壊れない家のために知っておきたい、耐震に関する知識

耐震基準とは

耐震基準は、建物を設計する上で地震に対して最低限備えるべき基準を規定(建築基準法20条等)したもの。日本では1950年に建築基準法が制定され、1981年の改正によってそれまでの旧耐震基準に代わる新耐震基準が制定されました。
1981年5月31日までの建築確認申請に適用されている建物が旧耐震基準、6月1日から適用されている建物が新耐震基準。「建築確認申請」とは、建物の建築前に建物や地盤が建築基準法等に適合しているか、自治体や指定確認検査機関に申請し確認してもらう手続きのことです。

旧耐震基準は、震度5強程度の地震でも建物が崩壊せず、補修すれば生活が可能であるという基準。倒壊はせずとも建物が損傷を受けることは想定されるレベルであり、震度5強より強い地震に対しての定めはありません。
一方、新耐震基準は、震度6強から7程度の地震でも建物が倒壊しないことを基準としています。震度5強程度でもほとんど損傷しないレベルであり、震度6以上の地震に対しても該当する基準となっています。

耐震等級とは

耐震等級は、2000年に施行された「住宅品質確保法」の住宅性能表示制度に伴って制定されたもの。耐震基準とは異なる地震に対する強度を示す基準となっており、耐震等級1~3まであり、数字が大きいほど耐震性が高くなります。

・耐震等級1
耐震等級1は震度6強から7に相当する大地震に耐えうる強度を持ち、震度5程度の地震には建物の損傷防止に効果あるとされています。
建築基準法の新耐震基準に相当する耐震性を表します。

・耐震等級2
耐震等級2は耐震等級1の1.25倍の強度を持ち、災害時の避難場所として指定される学校や病院などに必要な基準とされています。
また、長期優良住宅として認定されるには耐震等級2以上の基準が必要となります。

※長期優良住宅は、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(2009年6月施行)に基づき始まった制度で、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅を認定するものです。

・耐震等級3
耐震等級3は耐震等級1の1.5倍の強度を持ち、災害時の救護活動の拠点となる消防署や警察署の多くが耐震等級3の基準を備えています。

耐震構造とは

地震に対する家の構造には、主に家の工法と耐震構造の2つが寄与しています。
まずは住宅でよく用いられる工法を知っておきましょう。

・木造軸組み工法
 柱や梁、筋交いで空間を構成する、日本の伝統的な工法。自由な間取りを実現しやすいという特長があります。

・木造軸組壁式工法(2×4)
 木質パネルと角材(2インチ×4インチ)で作ったパネルで壁・床・天井の面を作り組み立てて作る工法。面で住宅を支えることから耐震性が高く、気密性や断熱性にも優れています。

・軽量鉄骨造
 6mm未満の鋼材で柱や梁、筋交いで骨組みを作る工法。大きな空間を実現できるなど、レイアウトの自由度が高いのが特長で、木造の軸組み工法より耐震性にも優れています。

・鉄筋コンクリート(RC)造
 鉄筋で骨組みを作り、型枠で囲ってコンクリートを流し込んで壁や床などを構成する工法。3階建ての住宅によく用いられ、耐震性に優れています。

・木質系プレハブ工法
 工場であらかじめ作られた壁や床などの木質パネルを用い、現場で釘や接着剤で組み立てていく工法。木質系以外にも鉄骨系、コンクリート系などがあります。
 木造軸組み工法より一般的に耐震性に優れています。

続いて、地震に対する耐震性を実現するための構造には「耐震構造」「免震構造」「制震度構造」の3種類があります。

・耐震構造
耐震構造は柱や壁、梁、筋交いなどを強化し、建物全体の構造体を強くすることで地震に対抗する構造です。
人命を守ることが優先され、壁や梁が壊れたりすることはやむを得ないという前提です。

・免震構造
建物と基礎の間に水平方向に自由に動く積層ゴムや剛球などを設置することで、地表の揺れを建物に伝わりにくくする構造です。

・制震構造
建物内にダンパーや錘などのエネルギーを吸収する制振装置を設置し、建物に伝わったエネルギーを吸収して揺れを小さくする構造です。

震度が高くても壊れない家を建てるには

耐震性の高い構造で建てる

耐震性が高い家、具体的には建築基準法の新耐震基準(耐震等級1相当)を満たすだけでなく、耐震等級2もしくは3の家を建てることが、震度が高くても壊れない家に近づく第一歩。
耐震等級は住宅性能評価による認定制度によって判定されますが、認定がなくても免震構造やその他の工法を採用することで、耐震等級2あるいは3と同じ性能の建物を建てることができます。
免震構造は建築基準法上、震度6強の地震でも建物に被害が生じないかごくわずかであることを目標としており、耐震等級3に相当するものです。
一方、制震構造は建築基準法上の明確な基準はなく、制震装置を取り付けても耐震性がどこまで上がっているかは明確ではありません。
ですので、制振構造を取り入れているハウスメーカーを検討する場合には、建物の耐震性をどのような基準で実現しているかしっかりと確認しましょう。

地震に強い家の特徴を知る

工法や構造以外に、地震に強い家の特徴を知っておくことも大切です。

・建物の形がシンプル
同じ面積で支えあうため、基本的に家の形状がより正方形に近いほうが耐震性は高くなります。

・建物の重量が小さい
地震のエネルギーは建物の重量に比例するため、重量が小さいほど地震に強くなります。
3階建てより2階建て、鉄骨より木造のほうが重量が小さいため、重量という観点で見ればより地震に強いといえます。

・基礎の違い
一般的に一戸建ての基礎は、「布基礎」と「ベタ基礎」がありますが、壁の下にのみ基礎を配置する布基礎と比べて建物が接地する部分全体に基礎を敷くベタ基礎のほうが地震に対して強くなります。
1995年に阪神淡路大震災が起きたことを受けて、90年代後半からベタ基礎を採用する住宅が増えました。

・地盤が強い
いくら建物の耐震性が高くても、支える地盤が軟弱だと地震の揺れが増大しやすく地震に対して弱くなります。
地盤調査の結果、地盤が弱い場合は地盤改良をする必要があります。

地震に弱い家の特徴も知っておく

・建物の形状が複雑
コの字・L字型などの複雑な形状の建物や外壁の形状に凹凸が多い家は地震の力がある部分に集中しやすく、その部分からねじれや崩壊を起こしやすいという特徴があります。

・1階部分がガレージ
1階部分にガレージを配置し壁量が少ない家や2階より1階部分が出っ張っている形状(いわゆるオーバーハンチング)の建物は上階の荷重をうまく1階→地盤へと伝えにくくなり、地震に弱くなります。

・屋根の重量が重い
屋根の重量が重いと、重心が高くなる分地震の揺れも大きくなります。
土葺き屋根、瓦・セメント瓦などは重量が重く、スレートや金属屋根など軽い屋根より地震に対して弱いといえます。

なお、新築後に増改築した場合などは当初の設計段階より家の形状や壁の配置が変わり、耐震性が変化していることがあります。不安であれば耐震診断を受けるようにしましょう。

持ち家があるなら自己チェックを

自宅の耐震性に不安がある方は、1度ご自身でチェックしてみるのがおすすめ。自己チェックの主なポイントは以下のような点になります。

  • 建築年(耐震基準)
  • 建物の形状
  • 1階と2階の壁面が一致しているか
  • 耐震性の評価書の有無(住宅性能表示や長期優良住宅等)
  • 基礎(床下や新築時の設計図書等)
  • 使用している屋根材
  • 増築の有無
  • 地盤の強さ
    (古地図や地盤に関するポータルサイト、自治体のゆれやすさマップ等)

これらのポイントなら、専門家に依頼しなくてもチェックできるでしょう。

持ち家の耐震診断を依頼してみる

自分でチェックするだけでは不安な方は、耐震診断を依頼してみるのもよいでしょう。
耐震診断には、建築士でなくても可能な「簡易診断」と建築士が行う「一般診断」「精密診断」があります。
より信頼性の高い耐震診断をしたいということであれば、一般財団法人日本建築防災協会の「耐震診断資格者講習」「国土交通大臣耐震診断資格者講習」といった講習を修了した1級建築士に依頼するようにしましょう。

持ち家の耐震補強を行う

耐震性が不足しており強い地震に対して不安ということであれば、耐震補強を行うことを考えましょう。補強工事では以下のような対策が施されます。

  • 基礎の補修・基礎コンクリートの増打ち
  • 柱と土台、横架材、筋交いなどの接合部の補強
  • 軽い屋根材への変更
  • 2階部分の減築 など

旧耐震基準の建物を中心に、全国の自治体で補助金制度を設けています。ぜひ確認してみてください。

ここまでご紹介したとおり、大きな地震に耐えられる家を建てる工法や構造、対策はいろいろと考えられます。
その中でも、住宅のデザイン性を確保しながら日本で最も高い耐震等級3を実現できるのが「SE構法」。
SE構法は、部材ごとの強度が示された集成材を金物で緊結した「ラーメン構造」と耐力壁を組み合わせる構造です。
高い耐震性を実現しながら内側の柱や壁を少なくできるため、吹き抜けや大開口といった間取りの自由度が高い工法です。

SE構法は、一般的な在来工法と異なり、施工できるのは「SE構法登録施工店」のみです。
その限られた工務店のうち、神戸で唯一全棟をSE構法で提供しているのが「ホエールハウス」。
阪神大震災の被災地・神戸の住宅会社として、強い震度でも壊れない家にこだわりを持つホエールハウスでは、定期的に家の耐震性に関する無料セミナーを開催しています。
地震に強い家を建てたいとお考えの方は、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

それでも家が壊れる震度の地震がきたらどうする?

最高震度「7」ってどれぐらい?耐えうる家は建てられる?

震度7の地震になると人は立っていることすら難しく、建物の一部だけでなく建物自体が倒壊することも。ですが、地盤や基礎の強度を確保したうえで建物の耐震性能を上げる・耐震性を考慮した間取りにするといった対策をすれば、震度7の地震でも壊れない家に近づけます。
とはいえ、建築基準法上、木造2階建て以下かつ床面積500平方メートル以下の一般的な木造住宅(建築基準法の4号建物)では構造計算は必要とされておらず、客観的にどこまで耐震性が確保されているかは分かりません。
最高震度7に耐えられる家を建てたいということであれば、震度6強~7レベルの1.5倍の力に対して倒壊・崩壊しないような強度であり、日本で最高ランクである耐震等級3を指標とするのが望ましいといえます。

大地震が起きる前に備えておきたいこと

強い震度で壊れない家を建てたとしても、家の中で大型家具が転倒したり割れた食器でケガをしたりといったリスクは回避できません。
普段から以下のような対策を心掛けておきましょう。

  • 家具等を転倒防止金具などで固定
  • 重いものをできるだけ下に収納
  • ガラスの飛散防止対策
  • 非常時に持ち出すものをリュックなどにまとめる
  • 地震後の生活を支える食料や水
  • 避難場所の確認

家が壊れてしまったら…知っておきたい対処法

大きな地震で家が倒壊して住めなくなった場合、どうすればよいのでしょうか。

1つは、被災者生活再建支援制度の活用が考えられます。災害の規模や損害の程度、再建方法などに応じて、最大300万円の支援金を受けることができます。

※参照:内閣府 防災情報のページ「被災者生活再建支援法の概要」

2つめは、加入している地震保険の活用。補償内容によっては建物だけでなく家財の損害に対しても補償されます。
ただし、地震保険の保険金額は最大でも火災保険の50%までという上限があり、損壊した家を再建するには十分ではありません。

3つめとして、住宅ローン返済中の方が債務を抱えたままの再建が困難な場合には、法的な手続きによらず債権者と債務者の合意に基づき債務整理を行う手続きをまとめた「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を活用することが考えられます。
まずは借入先の金融機関に要件や手続きを確認するようにしましょう。

※参照:一般社団法人東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」

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