高気密高断熱住宅について【5分】でまるっと解説!

高気密高断熱住宅について【5分】でまるっと解説!

※写真はイメージです。施工事例ではありません。

夏は涼しく、冬は暖かい。そんな希望を叶えてくれる「高気密・高断熱住宅」について、具体的にどのような家を指すのか、メリットやデメリットは?といった点を分かりやすくまとめました。

高気密・高断熱住宅とはどんな家?

高気密住宅とは

高気密住宅とは、外からの空気の侵入をしっかりと防ぐことで、外部の激しい気温差に影響されることなく一年中快適に過ごせる住宅のことを指します。

どれだけ腕のいい大工さんが建てたとしても、木造住宅には必ず目に見えない隙間ができます。その隙間から、夏には暑い空気が室内へ流れ込むため冷房の効きが悪くなり、冬には冷たい空気が室内へ流れ込むため暖房の効きが悪くなります。そのため、夏は暑く、冬は寒い家になってしまうのです。

高気密住宅は、この隙間ができないように気密テープや防湿シート、断熱材などを使用し、外の空気が部屋へ流れ込むことを防いでいます。また、室内の空気が外に流れることも防げるため、エアコンなどを過度に使う必要がなくなり、光熱費の節約が期待できます。

高断熱住宅とは

高断熱住宅とは、壁や天井などに優れた断熱材を使うことによって、断熱効果を高めた住宅のことを指します。
特に窓の開口部分は壁や天井に比べて断熱性が低く、夏の暑い空気や冬の冷たい空気が部屋へ流れ込むのも、窓からの比率が大きくなっています。その点、高断熱住宅では断熱効果の高い窓や気密性の高いサッシを採用するため、外からの空気が伝わりにくい状態になります。

高断熱住宅も高気密住宅と同じく外の空気が伝わりにくくなるため、部屋の温度を常に快適に保ち、冷暖房のために無駄な電力を使う必要がなくなります。

高気密・高断熱住宅は、どちらかの性能が優れていれば良いというわけではありません。どちらも優れていてこそ、充分な効果が発揮できるのです。

高気密、高断熱住宅のメリット・デメリット

一年中快適に過ごすことができる高気密・高断熱住宅ですが、デメリットもあります。
メリットとデメリットについて詳しくご紹介しましょう。

メリット

光熱費の節約
高気密・高断熱住宅は、外と中の壁の間に断熱材を用いたり気密テープなどで木造住宅の細かい隙間を防いだりすることにより、夏の暑い空気や冬の冷たい空気の侵入を防ぐことができます。また、室内の空気が外へ逃げてしまうのも防げるため、エアコンで冷やした空気や暖房で温めた空気が外に漏れにくく、室内を快適な温度で保つことができます。
昨今の厳しい暑さや寒さに対応するためにエアコンの温度を過度に下げなければならない…ということも無くなるので、光熱費の節約につながります。
ヒートショックの予防
ヒートショックとは、暖かい部屋から寒い部屋への移動で血圧が上下して身体がダメージを受けること。特に冬場は温かい居間から寒い脱衣所へ移動するときなどに家の中で気温差が生まれるため、ヒートショックが起きやすいといわれています。
高気密・高断熱住宅であれば家の中の温度を一定に保つことができるため、ヒートショックのリスクを下げることができます。
防音効果
高気密・高断熱住宅は、断熱材による吸音効果や室内の空気が外に漏れにくいという点から防音効果も期待できますので、小さいお子さんがいる家庭や生活騒音が気になる方におすすめ。
また、近くにコンビニや深夜まで営業しているお店があると人の声が気になることもありますが、高気密・高断熱住宅なら外の音も遮断してくれるため、静かに暮らすことができます。
結露しにくい
断熱性能が低かったり換気がしっかりされていないと結露が発生します。部屋の暖かい空気が冷たい窓によって冷やされ、結露になるのです。
高気密・高断熱住宅は断熱効果の高い窓や壁を使用するため、結露しにくくなります。

デメリット

換気に注意が必要
高気密・高断熱住宅は気密性が非常に高いため、換気をしっかり行わないと建築資材から自然発生する有害物質が部屋の中に滞留し、アレルギー症状やシックハウス症候群などの健康被害が発症する恐れがあります。
ただし、2003年に建築基準法が改正され、全ての住宅に24時間換気システムを導入することが義務化されたため、故意にシステムを切らない限り、自動的に新鮮な空気が循環するようになっています。
建設コスト
高気密・高断熱住宅は高性能な断熱材や窓などを採用するため、普通の住宅よりも建設コストがかかります。
ですが、高気密・高断熱住宅は冷暖房の節約になるため、ランニングコストは抑えることができます。
多少建設コストが掛かったとしても、ランニングコストが削減されることで相殺される場合もあります。長期的な観点で検討しましょう。
乾燥しやすい
高気密・高断熱住宅は室内の温度を一定に保ってくれるからこそ、乾燥しやすいといえます。
部屋が暖かいと空気が乾き、乾燥します。特に冬場の空気は湿度が低くなっているため、部屋がより乾燥することに…。
加湿器を置くなどの対策が必要となりますが、過剰に湿度をあげると結露が発生して耐熱材が湿気ってしまうといったリスクがあるため、注意が必要です。

高気密・高断熱住宅の工法

住宅の断熱工法には、建物の内側に断熱材を入れる「充填断熱工法」と建物の外側に断熱層を設ける「外張断熱工法」があります。
充填断熱工法と外張断熱工法に優劣はありません。しかし、それぞれに特徴があるため、施工方法や材料などを正しく理解しておきましょう。

充填断熱工法とは

充填断熱工法は昔から日本の住宅に用いられてきた工法です。壁内や天井裏の柱の間に断熱材を入れるとコストは外張断熱工法よりも低くなりますが、外張断熱工法のように家の外側を覆うような工法ではないため、気密性は低くなります。また、ボード状やシート状の断熱材を用いる場合、細かな場所への施工は難しくなります。
その他の特徴として、壁の内側の空間を利用するため外壁を厚くせずに済むという点や、壁内や天井裏への設置なので外部の影響を受けにくく、材料劣化の心配が少なくなるという点が挙げられます。

外張断熱工法とは

外張断熱工法は充填断熱工法とは違い、家全体を覆う施工になるためコストは高くなりますが、気密性は高くなるため、ある程度費用が掛かっても断熱性や気密性を重視したい方には充填断熱工法よりもおすすめです。
外張断熱工法のデメリットとしては、壁に厚みが出来てしまうため場所が限られるという点や、気密性が高まるためしっかりと換気をする必要があるという点が挙げられます。

高気密・高断熱住宅に使われる断熱材

断熱材は大きく分けて「無機繊維系断熱材」「木質繊維系断熱材」「天然素材系断熱」「発泡プラスチック系断熱材」の3つに分類できます。
それぞれの断熱材の代表的な素材についてご紹介していきます。

無機繊維系断熱材

グラスウール
断熱材として多くの住宅で使用されており、安価なことが最大のメリット。
ガラス繊維でできており、シロアリ等の害虫や火災に強く、防音効果もある断熱材ですが、湿気には弱いのがデメリットといえます。
かつては殆どの住宅で断熱材として使用されていたため、グラスウールといえば安価で性能が低い断熱材だと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、グラスウールの中でもグレードが分かれており、繊維の密度や厚みが上がるにつれてグレード(断熱性能)も向上していきます。
ロックウール
鉱物原料を高温加工してつくる石綿の一種で、断熱・防音性が高いため、空港などの商業施設でも活用されている断熱材です。
グラスウールよりも断熱性に優れていますがその分価格は高く、湿気に弱いのはグラスウールと同じです。

木質繊維系断熱材

セルロースファイバー
古新聞や段ボールなどの古紙やおがくず(木材)を再利用した、天然の木質繊維からできた断熱材。断熱のほか、結露予防や防火、害虫予防といった多くのメリットを持ちます。
グラスウールに比べると時には倍近くなるほど価格は高めですが、ボード状・マット状の無機繊維系とは異なり綿状なので、壁の内部に吹き付けて施工するため、狭い隙間も充填することができ、高い断熱性が期待できます。
グラスウールと異なり、湿気に強いこともポイント。

天然素材系断熱

羊毛(ウールブレス)
羊毛に防虫処理を施した断熱材。羊毛ならではの高い調湿力と断熱性が最大のメリットです。空気を貯めこんで断熱するほか、湿気を自ら吸収・放出することができ、耐久性にも優れています。
天然の羊毛だけに価格が高いのがデメリットで、比較的新しい断熱材であることから高い施工技術を持つ業者が少ないことも懸念点です。
炭化コルク
ワインの栓などの製造過程で排出したコルクの端材を炭化させた断熱材。コルクは多くの空気を含むため、断熱性のほか、湿度調整や防音効果も期待できます。また、コルク樫には自然由来の防虫効果があるのもメリット。端材を用いた環境に優しい断熱材なのですが、こちらも天然ゆえ高価な素材となります。

発泡プラスチック系断熱材

硬質ウレタンフォーム
充填式の断熱材で、高い断熱性能と省エネ効果が得られるのがメリット。比較的安価でありながら、透湿性や耐久性にも優れているのが特徴です。
吹き付けによって施工するタイプは狭い隙間にも充填でき、高い断熱性が期待できます。
デメリットは、性能が高い分コストも高くなることと、可燃時に有毒な”シアン化水素”という物質が発生する点。火気には充分注意が必要です。
フェノールフォーム
フェノール樹脂をボード状に形成した断熱材。熱を帯びるとプラスチック状に硬化するため、発砲プラスチック系断熱材の中でも特に高い断熱性能を誇ります。
熱による硬化によって防火性にも優れており、硬質ウレタンフォームと違って燃焼時に有毒ガスが出ないのもメリット。
デメリットは、性能が高い分高額になる点と、害虫の被害に逢いやすいという点です。
ビーズ法ポリスチレンフォーム
発泡スチロールと同じく、粒状のポリスチレンを型に入れ発泡させることでできた断熱材。水分を通しづらいため水に強く防湿性に富み、軽くて耐久性にも富んでいるほか、安価で施工に高度な技術を必要としないため、広い範囲で活用されています。
デメリットは他と比べて断熱性能は少し低めなことと、熱に弱く防火性に懸念が残ることです。
押出法ポリスチレンフォーム
軽くて加工しやすい断熱材で、基礎断熱(家の基礎となるコンクリートの土台自体を断熱材で覆うこと)などにも活用されています。水や湿気に強いのもポイント。
基本的な性能はビーズ法ポリスチレンフォームと同等ですが、押出式のほうがコストが安く、プラスチックの粒子が細かいため断熱性が高いといわれています。
デメリットは、水には強いが熱には弱いので防火性が低い点と、経年によって性能が劣化する可能性があるという点です。

高気密・高断熱で知っておきたい「UA値・C値・Q値」とは

UA値とは

UA値とは「外皮平均熱貫流率」、つまり「家の熱量がどれだけ外へ流れていくか」を表すもの。
外へ流れていく熱量を、断熱層がある部分の外壁や窓・床などの面積の合計(外皮面積)で割ると値を出すことができます。

UA値=各部の熱損失量の合計/外皮面積であり、UA値の数値が小さいほど断熱性能が高いといえます。

外へ流れていく熱量に関しては、UA値のUを表す「熱貫流率」が重要になります。
(一方、UA値のA=平均という意味です)
室内と外との温度差が1度あるとき、1時間に1平方mの壁を通過する熱量を表したのが「熱貫流率U」。こちらも数値が小さければ小さいほど良いとされています。

室内の壁から外側の壁までの間には断熱材や空気層などがあり、資材によって熱の流れにくさが異なります。UA値を低くするためには、高い性能を持つ断熱素材を使用し、室内の熱量を外に流れにくくする必要があります。

C値とは

C値とは、住宅がどのくらい隙間があるのかを表す値。そのため、この値も小さいほど気密性が高いといえます。

C値の計算方法は以下のとおり。

C値=住宅全体のすき間の合計/延べ床面積

専用の試験機を使って測定した住宅全体のすき間の合計を延べ床面積で割ると値を出すことができます。

C値に関しては、工務店やハウスメーカーによって平均値が大きく異なります。
C値が高いと気密性が低くなるため、夏は暑く、冬は寒い家になります。
一般的な住宅の場合、C値は10平方cm/平方mといわれています。高気密・高断熱住宅を建てたい方は、施工会社の出しているC値の平均値をしっかりと確認しましょう。

Q値とは

Q値とは、UA値と同じく「家の熱量がどれだけ外へ流れていくか」を表すもの。UA値と大きく異なる点は、計算方法にあります。

Q値=(各部の熱損失量の合計+換気による熱損失の合計)/延べ床面積

Q値は外皮の熱損失量だけでなく、換気した場合の熱損失量も計算に入れます。また、断熱層がある部分の合計ではなく、床面積で割ることによって数値を出します。
Q値は断熱性能とともに空調の効率も分かるため、低いほど省エネな住宅であるといえます。

もともと家の断熱性能を表す基準はQ値のみでしたが、1999年に改正された「次世代省エネ基準」以降はUA値も採用されるようになり、今では工務店やハウスメーカーのパンフレットにはQ値とUA値の両方、あるいはUA値のみが記載されるようになっています。

高気密・高断熱住宅に関するQ&A

換気システムはどんなものを選べばよい?

2003年に建築基準法が改正され、全ての住宅に24時間換気システムを導入することが義務化されました。24時間換気システムによって、1時間あたりで家の中の空気の半分が外へ排気され、2時間で全体の空気を入れ替えることができるように。そんな便利な24時間換気システムには、3つの種類があります。

第1種換気
給気も排気も機械で行う方式のこと。
換気扇などの機械で強制的に空気の入れ替えをするため、安定的に空気が入れ替わります。
給気口と排気口に換気扇をつける必要があるため、設置費用などの導入コストや電気代がかかるので注意が必要です。
第2種換気
給気を機械で行い、排気は自然に行う方式のこと。
給気は強制的に機械で行い、その吸気した空気で各部屋にある換気口から自然に押し出して排気します。
外からの汚染物や菌が入りにくいというメリットがあるため、病院や研究所などで用いられることが多い方式です。
第3種換気
給気を自然に行い、排気は機械で行う方式のこと。
給気口には換気扇がつかず、換気口から自然に換気されます。
マンションや戸建て住宅で多く採用されており、すべての部屋に給気口が必要となります。
電気代や導入コストが安いというメリットがありますが、第1種換気と比較すると換気能力は下がります。

全館空調を選ぶべき?

高気密・高断熱住宅には、全館空調を検討するのも良いでしょう。
高気密・高断熱住宅はエアコンの空気を室内に留めておけるため、全館空調にすることによって効率的に家の中の温度を一定に保つことができます。
冬場のヒートショックのリスク軽減のほか、全館空調は常に換気している状態になるためアレルギー症状やシックハウス症候群が起こる可能性も抑えられます。

石油ストーブ、ガスストーブは使える?

高気密・高断熱住宅での石油ストーブ、ガスストーブの使用はおすすめできません。
24時間換気システムが併設されているとしても、石油ストーブなどから排出される燃焼ガスや二酸化炭素を換気するものではないため窓を開けて換気をする必要がありますが、特に冬場は窓を開けての換気が億劫になってしまうため、一酸化炭素中毒の危険性が高まります。
また、石油ストーブやガスストーブを使用する際に発生する水蒸気が断熱材に染み込み、腐食する可能性もあります。

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