工法にこだわって地震に強い家を建てるポイントとは?

地震に強い家の工法・構造とは

住宅の工法にはさまざまな種類があり、地震に強いか弱いか、程度はそれぞれ異なります。
現在の主な建物の工法は以下の6つ。

  • 木造軸組工法(在来工法)
  • 木造枠組壁工法(ツーバイフォー(2×4)工法)
  • 木造ラーメン工法(SE構法)
  • 鉄筋コンクリート造(RC造)
  • 重量鉄骨造
  • 平屋建て

ここでは、それぞれの工法における地震への強さやメリット・デメリットを解説していきます。

木造軸組工法(在来工法)

木造軸組工法とは、柱に梁(軸組)を組み合わせて建てる工法のこと。歴史的な神社や古民家もこの工法で建てられており、今でも多くの家で採用されています。
木造軸組工法では筋交いを使用した耐力壁が用いられており、横から力がかかった時、筋交いによって建物が歪むのを防ぎます。

  • 筋交い:柱と柱の間に斜めに入れられた補強部材
  • 耐力壁:垂直、水平方向からの力に抵抗して建物を支えるための壁

一方で、木造軸組工法は柱や梁、筋交いといった「線」で支えるため耐力壁の量が少なくなり、地震の力を受けた際の耐震性は他の工法に比べると劣ります。しかし、適切な耐震設計により耐震性に優れた家を建てることは可能です。

木造軸組工法は間取りを自由に決めやすいため、「収納を広く取りたい」「広いリビングが欲しい」といった希望にも合わせやすいのがメリットの一つ。また、リフォームもしやすく、建てた後にライフスタイルの変化に合わせて間取りを変えたり増築したりが可能です。他にも「建築費用が安い」「木のぬくもりを感じられる」「調湿効果がある」などメリットがあります。
一方、「耐久性が低い」「シロアリ被害が起こりやすい」「火災に弱い」などが木造軸組工法のデメリット。ですが、千年以上前に建てられた建築物が残っていることを考えても分かるように、適切なメンテナンスをすれば耐久性は上げられます。シロアリに関しても、防虫処理を施せばある程度は防げるでしょう。

木造枠組壁工法(ツーバイフォー(2×4)工法)

木造枠組壁工法とは、2インチ×4インチの角材で作った枠組みに構造用の板材を接合し、それらを専用金具で箱型に形成する工法のこと。北米で生まれ、現在は欧米でよく利用されています。
木造軸組工法と違って「線」ではなく「面」で構成されており、地震の力が一点に集中せず拡散されるため、木造軸組工法と比べて耐震性に優れています。

ツーバイフォー工法は箱型のため施工しやすい点、隙間が少なく気密性や断熱性が高い点がメリット。
しかし、木造軸組工法と違って間取りの変更やリフォームは簡単にはできません。壁で支える構造になるため、自由に窓や入り口を変更できない・窓の大きさが制限されるといったデメリットもあります。気密性・断熱性が高い分、カビやダニが発生しやすいのもマイナスポイントです。

木造ラーメン工法(SE構法)

木造ラーメン工法(SE構法)とは、接合部を強くすることで強固な構造を持つ建物を建築できる工法のこと。従来鉄筋コンクリート造マンションなどで採用されている「ラーメン構造(柱と梁で建物全体を支える構造)」を木材住宅に応用したものです。

SE構法は、阪神大震災で木造家屋が倒壊した経験により、より安全な家屋を作るために研究され完成しました。
SE構法には、十分に乾燥された木材を強度ごとに分類して科学的に計算しながら張り合わせた「構造用集成材」が使われています。また、従来の木造住宅ではほとんど行われていなかった「構造計算」を全棟に取り入れており、構造設計師がさまざまな角度から数値を計算し、部位ごとに適切な強度を持つ部材や太さを決定。さらに接合部には特殊な金物を使っており、断面の欠損が少なくより耐震性を高めています。
SE構法は数値に裏付けられた計算により、最高級の耐震等級3が取得可能。「地震に強い工法」といえるでしょう。

地震への強さ以外にも、大空間や大開口、吹き抜けなど「自由度の高い間取りを作れる」「リフォームに対応しやすい」「断熱性を高めやすい」点がSE構法のメリット。
一方で、高い技術力を要するため「施工が可能な工務店を探すのが大変」「コストがかかる」という点がデメリットです。

鉄筋コンクリート造(RC造)

鉄筋コンクリート造(RC造)とは、鉄筋とコンクリートで構造体を作る工法。骨組みに鉄筋が使われ、その周りはコンクリートで覆われた構造をしています。
コンクリートは圧縮に強く、鉄筋は引っ張りに強いため、耐震性に優れた工法の1つ。重量があるため揺れは大きくなりますが、倒壊しにくいのも特徴です。また、コンクリートは2,000度でも変成しないため、地震時に火災が発生しても構造が燃えることはほとんどありません。

鉄筋コンクリート造は防音性や気密性、耐火性にも優れています。そのほか「メンテナンス性が高い」「耐用年数が高い」といったメリットも。強度が確保できれば、柱のない広々したリビングや吹き抜けなどのデザイン性の高い間取りを実現可能です。
一方、「コストがかかる」「コンクリートの打設や養生期間に時間がかかる」「天候に左右される」「結露が起こりやすい」などがデメリットとして挙げられます。建物自体が重いため、地盤が弱い土地では建物が傾いたり倒壊したりする可能性があるので注意が必要です。

重量鉄骨造

重量鉄骨造とは、骨組みに厚さ6mm以上の鋼材を使って建設された建物のこと。主にビルやマンションで採用されています。
基礎と骨組みともに頑丈なため、地震に強い構造といえます。地震で力が加わった際は鉄骨の「粘り」によりしなって変形するため、地震のエネルギーを吸収することが可能。倒壊もしにくく、倒壊するとしても時間がかかります。

柱と梁を一体化し筋交いを必要としないため、「広い空間が作れる」「地震保険や火災保険が木造に比べて安い」といった点が重量鉄骨造のメリット。他にも「防音性が高い」「丈夫で長持ちする」といった特徴があります。

一方、「構造費用が高い」「音が響きやすい」「錆に弱い」点がデメリット。鉄筋コンクリート造と同じく建物自体が重くなるため、地盤の補強が必要な場合もあります。

平屋建て

「平屋建てなら地震に強い」と思われるかもしれませんが、平屋ならどれでも地震に強いというわけではなく、上記で挙げたとおり、平屋建てであっても工法によって耐震性は異なります。
工法以外の面でいえば、平屋建てはシンプルな構造のため地震時に家にかかる力が分散されるうえ、二階がないため家が揺れにくく、倒壊のリスクを抑えられる建物です。とはいえ、倒壊はせずとも家がダメージを受ける可能性はもちろん否定できません。

「二階建てよりも耐震性に強い」「台風に強い」といった点が平屋のメリット。また、「メンテナンス費用を抑えやすい」「階段がないため子供や高齢者にも過ごしやすい」といった特徴もあります。
一方で「広い敷地が必要」「日当たりや風通しが悪くなる」といった点がデメリット。一階しかないため、プライバシーや防犯面には配慮が必要です。平屋建てで開放的な家を作ると柱が減るため、強度が弱まる可能性もあるでしょう。

【注意】工法・構造が耐震性のすべてではない

工法・構造の違いによって地震時の被害状況に差が生じるのは事実。ですが、工法・構造が耐震性のすべてではありません。

鉄筋コンクリート造の家を例に見てみると、新耐震基準(震度6から7程度の地震でも倒壊しないとされる水準)で建設された建物については、阪神大震災時の被害は多くはありませんでした。しかし、1階部分を駐車場にしているなど壁の配置に偏りがある場合、新耐震基準をクリアしていたにも関わらず被害を受けた建物もあったのです。

このような例からも分かるように、工法や構造が同じでも耐震性が同じになるとは限らず、建物の配置や築年数、地盤状況(立地)によって地震で受ける被害は変わるのです。

※参照:一般社団法人日本建築学会「阪神・淡路大震災調査報告」 https://www.aij.or.jp/books/categoryId/746/productId/590204/

そもそも「地震に強い家」ってどんな家?

国が定める耐震性の定義とその基準

耐震性とは建物が地震による揺れに耐えられる度合いのことで、品確法により基準が定められています。品確法に基づく「住宅性能表示制度」には住宅が地震にどれだけ耐えられるかを評価する項目があり、耐震性について3段階の等級が定められています。
耐震性の基準は「建築基準法」でも定められており、建物は震度6から7程度の地震に対して倒壊・崩壊しないレベルでなければなりません。これは、品確法における耐震等級1のレベルを示し、日本の建物における最低限の基準です。

また、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅を普及するための「長期優良住宅法」でも、耐震性についての項目が設けられています。今までは「耐震等級2級以上の強度」があれば長期優良住宅の認定が受けられていましたが、2022年10月に耐震等級が「3」に引き上げられました。
※長期優良住宅の認定を受けられれば、「住宅ローン控除の最大控除額が増える」「住宅ローンの金利が安くなる」などの優遇が受けられます。

このように、耐震性には最低限の基準(建築基準法)と国が推奨する基準(長期優良住宅の耐震等級3)の2つがあります。2022年の10月に耐震等級が3に引き上げられたことからも、日本では「耐震に強い家の基準」がより高レベルに変わってきているのが分かるでしょう。

※参照:
一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「住宅性能評価制度について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001586561.pdf
国土交通省「住宅・建築物の耐震化に関する現状と課題」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/taishin/jisinnbousaisuisinkaigi/jisinnsiryou3.pdf
国土交通省「長期優良住宅に係る壁量基準の見直し」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001486502.pdf

耐震等級とは?1.2.3の違い

耐震等級とは、品確法に基づく「住宅性能表示制度」で定められた住宅の耐震性能を示す指標のこと。地震に対して建物がどれだけ強いかを1から3までの等級にレベル分けされており、3が最高ランクとなります。

耐震等級1は、建築基準法で定められた最低限の耐震性能を満たすレベル。極めて稀に(数百年に1回)発生する地震に対して建物が倒壊、崩壊しない程度の強度が求められ、建物に備わっているべき最低限の耐震性能でもあります。
耐震等級2は耐震等級1の1.25倍の強度が必要です。避難所に指定されるような学校や病院などの公共施設は、耐震等級2以上の強度がなければいけません。
耐震等級3は耐震等級の1.5倍の強度が必要。災害時の救護活動や復興の拠点になる警察署や消防署などに求められるレベルです。

大きな地震から家を守りたいと考えるなら、耐震等級3の家を建てる必要があるでしょう。「耐震等級が3以上あれば地震に強いため安心」というだけでなく、長期優良住宅の認定要件の1つでもあるため、その他の要件を満たして申請が通れば税制優遇や住宅ローンの金利優遇が受けられるというメリットもあります。

免震・耐震・制震の違い

免震とは、地震の揺れが家に伝わらないよう建物と地盤の間に「免震装置」を設置する工法のこと。免震装置が地震の力を受け流し、建物の揺れを小さくしてくれます。
免震装置は水平方向に大きく変形する「アンソレータ」と、地震のエネルギーを吸収し揺れにくくする「ダンパー」で構成されています。費用は200万円以上と高額で、定期的なメンテナンスが必要です。

耐震とは、建物に地震の揺れに耐えられる強度を持たせる工法のこと。「強固な材料を使う」「壁に筋交いを入れる」「接合部を金具で補強する」などして建物を強くします。
耐震は、建築基準法で一定の基準を保つことが義務付けられている唯一の工法。費用は比較的安価で、義務に基づき建築物すべてに採用されています。

制震とは、地震の揺れを建物内で抑制する工法。建物の梁にダンパーや重りなどで作られた「制震装置」を取り付け、建物の揺れを小さくします。費用は50万円程度かかりますが、メンテナンスはほとんど必要ありません。

工法だけじゃない!地盤を地震に強くするには

耐震等級を上げ、免震や耐震・制震を取り入れれば地震に強い家になるかといえば、必ずしもそうとは言い切れません。
家を建てる場所の地盤が強くなければ地震による地盤沈下で建物が沈んでしまう可能性もあるため、注意が必要。地震に強い建物を建てる前に、まずは地盤に強い土地を選ぶのが先決です。

気に入った土地の地盤が地震に強いか弱いかを確認するには、地盤調査を行う必要があります。地盤が弱かった場合には、地盤改良工事が必要。地盤改良工事には「表層改良工法」「柱状改良工法」などがあります。
「表層改良工法」とは、セメントで地表周辺を固める工法。軟弱地盤の範囲が深くない場合(地表から深さ2mまで)に採用されます。
「柱状改良工法」は現地の土とセメントを混合したものを円柱状に固め、それを杭にすることで建物を支える工法。軟弱地盤が2m以上8mまでの場合に用いられます。良好な地盤まで地中に穴を掘り、柱状の補強体を埋め込むことで固い地盤を築くことが可能です。

SE構法で「地震に強い×希望の間取り」を叶えた家の事例集

木造の中でも特に地震に強いといえるSE構法。そんなSE構法の家を建てている注文住宅会社の1つが「ホエールハウス」です。
阪神淡路大震災の経験から地震に強い耐震住宅を目指し、SE構法を採用。兵庫県では唯一、全棟SE構法の家を採用しています。

ここでは、SE構法だからこそ実現できた2つの施工実例をご紹介しましょう。

スケルトン・インフィルの平屋

緑に面した側に窓を設けることでプライバシーを確保しつつ、カーテンのない部屋を実現。キッチンや寝室、ランドリールームやファミリークロークを繋げ、家事効率を高めています。
平屋建ては日当たりが悪くなるというデメリットがありますが、南側の窓上部に壁と一体となった軒を出すことで夏の強い陽射しを遮り、冬の温かい陽射しを取り込めるようにしました。愛猫のキャットハウスを置けるよう、リビングは広めのレイアウトに。また、家族構成やライフスタイルの変化に対応できるよう室内の耐力壁をなくし、間取りが自由に変更できるようになっています。
広めのリビング、間取りの変更が自由にできる間取りは、SE構法ならでは。木のぬくもりを感じられつつもデザイン性の高い建物が実現しました。

どこからでも展望を楽しめる家

建物の表側と裏側で違った雰囲気を持つおしゃれなお家。表側はベージュの壁に統一し、裏側は景色が眺められるよう眺望を遮らないガラス手すりを採用しています。夜は植栽のライトアップや室内からの光によって昼とは違った雰囲気が楽しめるのも魅力。映画や音楽をめいっぱい楽しめるよう、最高レベルの防音室も設置しています。
強靭なフレームでほとんど壁のないガレージを設計したことにより、リビングから愛車を眺めることが可能。さらにバルコニー側の眺望にもこだわり、大開口の窓を全面に使用しています。
「ほとんど壁のないガレージ」と「大開口の窓」は、SE構法だからこそ実現できた間取りです。

SE構法であれば、耐震性を確保しながら大きな窓や広い空間を作り上げることが可能です。ホエールハウスでは定期的に家の耐震性に関する無料セミナーを開催していますので、SE構法や住宅の耐震性についてご興味のある方はお気軽にご参加ください。

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