新築でも耐震等級1は危ない?最低限の耐震性能ってどれくらい?

耐震等級1・2・3の違い

1・2・3と3つある耐震等級は、どのような基準で等級分けされているのでしょうか。
等級ごとに解説します。

耐震等級1

耐震等級の中では一番低い等級で、建築基準法で定められている最低限の耐震性能を満たしていることを示すものです。
耐震等級1は、数百年に一度起こる震度6強から7に相当する大地震でも耐えられるように構造計算されています。

地震がきてもすぐには倒壊しないレベルですが、震度や規模によっては大きな修繕工事や住み替えなどが必要になることが考えられます。

耐震等級2

耐震等級1の1.25倍の耐震性能があることを示す等級で、震度6強から7相当の大地震に耐えられるように構造計算されています。
地震や台風などの災害の際に避難場所として指定される学校の体育館や病院などは耐震等級2以上の強度が必要です。

耐震等級1との違いは、小規模な修繕工事を行えば生活ができるという点。
また、耐震等級2は「長期優良住宅」の認定基準の1つとなっています。長期優良住宅とは、長期に渡り良好な状態で使用するために国から講じられた5つの基準を満たした住宅で、減税や住宅ローンの金利優遇等が受けられます。

耐震等級3

一番高い等級で、耐震等級1の1.5倍の耐震性能を示しており、災害後に地域の復興の拠点となる消防署や警察署などは耐震等級3で建てられているものが多くなっています。
震度6強から7に相当する地震にも耐えられ、地震の後も軽微な修繕工事を行えば生活ができるとされています。

マイホーム、耐震等級1で大丈夫?

耐震等級1の住宅は減っている?

平成27年度と令和2年度では、耐震等級にどのような変化があったのでしょうか。
データを参考に比較してみました。

耐震等級の推移

  • 平成27年度:全体62,627戸のうち耐震等級1が1,240戸(2.0%)、耐震等級2が3,300戸(5.3%)、耐震等級3が58,085戸(92.7%)となっています。
  • 令和2年度:全体93,673戸のうち、耐震等級1が492戸(0.5%)、耐震等級2が2,142戸(2.2%)、耐震等級3が93,673戸(97.3%)となっています。

※参照:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
平成27年度「建設住宅性能 評価書(新築)データ」 https://www.hyoukakyoukai.or.jp/kokai/h27/pdf/kodate_all.pdf
令和2年度「建設住宅性能 評価書(新築)データ」 https://www.hyoukakyoukai.or.jp/kokai/R02/pdf/kodate_all.pdf

住宅性能評価を受けている住宅数の推移

  • 平成28年度 23.3%
  • 平成29年度 24.5%
  • 平成30年度 26.1%
  • 令和元年度 27.7%
  • 令和2年度  27.8%
  • 令和3年度 28.2%

※参照:国土交通省 令和3年度の住宅性能表示制度の実施状況 https://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_001092.html

耐震等級2や3にするには?

すでに建っている住宅の耐震等級は、上げることができるのでしょうか?

耐震等級が不明な家の耐震等級を調べるには、「いつ建てられたか」が1つの基準になります。
1981年6月1日に、国の定める耐震基準が「旧耐震基準」から「新耐震基準」へと変わりました。
基準が変わったため、旧耐震基準で建てられた建物が新耐震基準で最低基準とされている耐震等級1を担保できているかは不明です。現行の新耐震基準の耐震性を確認するためには耐震診断が必要となります。

耐震診断の流れとして、まずは建物の概要や使用履歴・増改築・経年劣化・設計図書の有無などの予備調査を行い、耐震診断のレベルを判断。
続いて概算見積書を作成し、耐震診断が行われます。

耐震診断で新耐震基準の最低基準となる耐震等級1を満たしていないことが分かった住宅は、等級1を確保するための耐震工事が必要。
耐震工事では、専門機関の意見を聞きながら「基礎の補強」「構造材の接合部の補強」「壁の補強」「屋根の軽量化」などを行い、耐震性を上げていきます。

必要となる費用は施工会社によって幅がありますが、参考として、新築で耐震等級3を担保する場合の相場を挙げてみます。
基礎工事が約30万円、耐力壁に約25万円、水平耐力に約20万円(プランによっては不要な場合もあり)、構造材に約20万円、設計費に約25万円、合計でおよそ120万円程度かかると想定されます。

新築時の場合、耐震等級をどの等級にするかは施主が希望できますが、事前に建築士に伝える必要があり、住宅会社のプランによっては対応できない等級もあります。
耐震性を重視したい場合は、希望する等級で建てられる住宅会社かどうかを確認しましょう。

耐震等級とは

耐震等級とは、住宅が地震にどれだけ強く倒壊を防げるかを等級1から等級3の3段階で示す指標のこと。数字が大きくなればなるほど耐震性能が高くなります。

以前の日本には住宅を建築する際の明確なルールが設けられておらず、性能比較をするのが困難でした。そこで一般消費者にも分かりやすくするため、耐震等級の基準を定めたのです。
評価基準は2000年に施行された「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」で定められている「住宅性能表示制度」に基づいています。

ただし、「住宅性能表示制度」は義務ではなく任意制度のため、すべての住宅が性能表示をしているわけではありません。
性能表示をするには第三者機関の検査が必要で、これには約10~20万円がかかります。

耐震等級と耐震基準の違い

耐震基準とは、「建築基準法」「建築基準法施行令」によって定められた建物が最低限満たすべき耐震性能の基準。建築確認申請の手続きをして建築の許可を取るための条件となっています。

一方、耐震等級は品確法により定められた耐震性能を等級で表したもの。
そのため、耐震等級はあくまで指標であり、必ずしも守らなければならないというものではありません。

耐震基準は人の命を守ることを目的にしていますが、耐震等級は人の命+住宅の損傷を小さくすることを目的としている点が大きな違いになります。

耐震等級を高めるメリットとデメリット

耐震等級を上げて住宅性能評価の審査で等級が認定されると、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット

  • 地震に強い家を手に入れられる
  • 地震保険料が割引になる(耐震等級1の住宅は10%、耐震等級2の住宅は30%、耐震等級3の住宅は50%の割引)
  • 住宅ローン「フラット35」で金利優遇が受けられる

デメリット

  • 耐震の構法や施工によっては間取りに制限ができる
  • 住宅性能評価の審査や申請の費用がかかる(相場は10~20万円程度)

耐震等級はどうやって決まる?

建物の耐震等級を決めるには、耐震性の計算が必要になってきます。
耐震性の計算方法について、主に4つのポイントを解説します。

建物の軽量化

地震の揺れと共に建物も揺れます。
屋根や建物自体が重ければ重いほど揺れ幅が大きくなり、軽ければ軽いほど揺れ幅も小さくなるので、建物自体が軽ければ被害が小さく済みます。

耐力壁の量

筋交いなどで補強した耐力壁が多ければ、建物は強くなります。

一方、窓や大きな開口が多いと耐力壁の量が少なくなり、強度が落ちてしまいます。

耐力壁と耐震金物の配置バランス

耐震金物とは、土台・柱・桁梁などの主要構造部材の接合部分を固定させる金物のこと。
耐力壁と耐震金物でガチガチに固めれば強度は上がりますが、地震の揺れに対して柔軟に対応できません。

耐力壁と耐震金物のバランスを計算して配置することにより、耐震効果が発揮されます。

水平構面の耐震性能

水平構面とは、床と屋根などの水平方向の骨組みのことで、地震の揺れによる建物のねじれを防ぎます。
ねじれによる倒壊被害を防ぐために床を強化することで、建物の耐震性を高めることができます。

耐震等級の調べ方

これから住みたいと思っている家の耐震等級が何等級なのか不明な場合、どのように調べることができるのかをご紹介します。

もともと耐震等級の評価基準は、2000年施行の品確法で定められている「住宅性能表示制度」に基づいています。
住宅性能表示とは、建物の品質について第三者である専門家が一定の基準に基づいて評価する制度のこと。住宅性能表示制度は任意の制度なので、すべての住宅が住宅性能評価を受ける義務はありません。
そのため、耐震等級を調べるには住宅性能評価書(住宅性能評価の結果を記した書面)を確認するのが一般的ですが、取得していない建物もあるのです。
その場合、専門機関に依頼して「耐震診断」を受ければ住宅の耐震性などを診断できます。

これから新築する家の耐震等級を知りたい場合は、住宅性能評価書を交付してもらうために設計図面などの書類が必要なので、事前に施工を依頼する業者に相談しましょう。
住宅性能評価書を取得しておけば、住宅ローンの引き下げ、地震保険の割引といった様々なメリットがあります。

耐震・免震・制震の違い

耐震・免震・制震という言葉があります。
耐震は建物の強度を上げて地震に強くする方法、免震は地盤からくる揺れを免震装置で抑える方法、制震はダンパーなどの装置を使って揺れを吸収する方法となっています。

ここでは、耐震・免震・制震それぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説します。

耐震とは地震の揺れに耐えようとする工法

耐震とは、耐力壁を増やし耐震金物などで構造材の接合部を補強し地震の揺れに耐えようとする工法のこと。
耐震工法はもっとも一般的で、様々な建物に採用されています。

メリットは、建設コストが安価で済むこと。

デメリットは地震の揺れが直接伝わるため、建物内部の家電製品や家具の転倒が起こりやすく、下敷きになるなどの二次被害が起こりやすいという点です。

免震とは地震の揺れを受け流す工法

免震とは、地盤からくる地震の揺れを免震装置で受け流す工法のこと。
建物と地盤の間に免震装置を設置して建物と地盤を切り離すことにより、地震の揺れが直接建物に伝わらず倒壊しにくくなるという工法です。

免震のメリットは、地盤からの揺れを建物に直接伝えなくするため建物自体への損傷が抑えられる点。
また、揺れが小さくなることにより建物内部の電化製品や家具の転倒が起こりにくく二次被害を抑えられるという点もメリットです。

デメリットは免震装置のコストが非常に高く、施工会社も限られてしまうという点です。

制震とは地震の揺れを吸収する工法

制震とは、ダンパーなどを使い地震の揺れを吸収する工法のこと。
建物にダンパーなどの装置を設置し、地震の揺れを吸収するという工法で、一般的には耐震と制震はセットで施工されます。

制震のメリットは、免震装置ほどではないものの地震の揺れをある程度吸収するという点。
複数回繰り返される余震の揺れを吸収することにより、耐震のみの場合よりも建物の被害を抑えることができます。

デメリットは、間取りや設置場所によっては効果が出にくいという点です。

住宅の構造による耐震性の違い

一般的な住宅に用いられる構造には「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」の3種類があります。現在の建築基準法ではどの構造でも震度6強から7程度の地震に耐えうる性能となっています。

それぞれの構造別に、耐震性の特徴を見ていきましょう。

木造

鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べると木造は地震に弱いイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし、しなやかで軽い木造で建てた家は建物自体の重量も軽くなるため地震の揺れの影響を受けにくくなっています。バランスよく耐力壁を設置すれば更に耐震性を高めることが可能です。

鉄骨造

鉄や鋼の特性である粘りを活かして地震に耐える構造となっているのが鉄骨造。粘りがあるため倒壊しにくく、倒壊するまでに時間がかかると考えられています。

鉄骨造は木造に比べて建物自体の重量が重いため、地震の揺れを大きく感じます。
家具を設置する際は、突っ張り棒や耐震シートなどで揺れ防止の対策を施すとよいでしょう。

RC造

RC造は、鉄筋の引っ張る力に強くコンクリートの圧縮力に強い特性を活かして地震に耐えうる構造となっています。
コストは高くなりますが、それに見合った耐震性を兼ね備えている構造です。

ただし、RC造は鉄骨造と同じく建物自体の重量が重いので、揺れを大きく感じます。

「耐震等級〇相当」とは?

相当とは「その物事とほぼ等しいこと」を意味しており、「耐震等級3」と「耐震等級3相当」は「ほぼ等しいが全く同じものではない」ということになります。

「耐震等級〇相当」は第三者検査機関による認定を受けていないということなので、建築基準法で言えば「耐震等級1」。
費用がかかってしまいますが、第三者機関を通して住宅性能表示制度の検査・認定を受ければ地震保険の優遇などのメリットもあります。認定費用と受けられるメリットを比較して認定を受けるかどうか検討してみましょう。

耐震等級1じゃ不安…等級3の家を建てるなら

地震に強くかつ間取りの自由度が高いという、住まいの希望をどちらも叶える構法のひとつが「SE構法」。優れた耐震性能と自由度の高い空間を兼ね備えた構法です。

在来工法では柱や壁の多さが耐震等級を上げるポイントになりますが、間取りの自由度が減り、壁を取り払い柱もない広々としたリビングといった空間は実現しづらくなります。
一方、SE構法は専用の金物で柱と梁を接合したラーメン構造により、開放的な大空間や大きな窓を取り入れた自由度の高い間取りを可能としています。

一般的な木造住宅は「設計士が設計した建物は耐震等級1が担保されている」という前提のもと、構造計算が義務化されていません。いわば、設計士や大工の経験と勘で建物の安全性が決められているとも言えます。

SE構法は木造住宅ではあるものの、鉄骨造・RC造と同等の構造計算を全棟に実施しており、強度が数値として明示されています。
強度がしっかり検査されている安定した構造用集成材と接合金物を使用することにより、明確な「耐震等級3」を確保できるのがSE構法なのです。

阪神大震災を経た街・神戸の住宅会社「WHALE HOUSE(ホエールハウス)」では、お客様に自信を持って高性能な住まいを提供するため、SE構法を採用しています。
安全な住まいに安心して住んでいただくために、耐震について学べるセミナーも定期開催していますので、ぜひお気軽にお申し込みください。

戸建て 」のおすすめ記事

  1. 高気密高断熱住宅について【5分】でまるっと解説!
  2. 戸建てはどれくらいで建つのかを詳しく紹介
  3. 容積率・建ぺい率とは?知っておきたい戸建てのルール
  4. 戸建てとマンションどっちを買う?求める物によって選び方が変わる
PAGE TOP